中国映画『失恋33天』
2012年 05月 24日
2011年11月公開
監督:滕華涛
主演:文章、白百何
大物キャストや大物俳優が出ているわけでもない、舞台もほとんどが北京市内のオフィスや路上、お店の中という低予算映画。にもかかわらず、公開されるやいなや、予想に反して大ヒットとなったそうです。
ラブコメディーです。
ストーリーは、『失恋33天(失恋して33日)』というタイトルそのまま、20代の女の子が失恋してから33日間の出来事や心の動きを映し出したもの。
監督の滕華涛という人は、大ヒットドラマ『蝸居(かたつむりの家)』を撮った人だそうで、それを知って、この映画のおもしろさ、上手さ、に納得。『蝸居』と同じように、ごく普通の人々の生活と、生活の中での細やかな感情の移り変わりを丁寧に描いていて、好感と共感を覚えました。
ただ、共感という面においては、特に男女の愛情のあり方に関して、やっぱり中国人独特の感覚があって、これは私が歴史物でない中国映画を見る時いつも感じることなのだけれど、どうしても無条件に感情移入できない場面もあります。だからこそおもしろいと言えば、おもしろいのだけれど。
*以下、ネタばれあり。ご注意を。
さて、ストーリーの要は、主人公の女の子が失恋によって、今までの彼氏との付き合い方を振り返り、なぜ駄目になったのかということに徐々に気づいていくところにあります。その過程に彼女の同僚の男性が大きく関わってきます。
失恋して仕事も手に着かないくらいに落ち込んだ女性が立ち直るために必要なのは、新しい恋である、…というのは常套手段だけれど、私はこの男性はてっきり正真正銘のゲイだと思っていました。なので、彼女と彼との間に新しい恋が芽生える可能性を始めから除外して見ていたので、最後に、ええええ~、そうなの?とちょっとあっけにとられたところがあって、それは私の誤解と言えば誤解なのですが、もしかしたら、ドラマチックな展開を狙って、わざと観客にそう誤解させるよな描き方をしたのではないか、と勘繰らざるを得ません。だとすると、ちょっとあざとい感じがして、その点、気になりました。
印象に残ったのは、ウェディングプランニングの会社に勤める彼女が顧客として知り合った老夫婦の描き方。話の流れとしては、男女の愛情の難しさを味わいはじめたばかりの若い女の子が、この酸いも甘いもかみ分けた老夫婦に関わることによって、何かを得る、ということだと思うのだけれども、この老妻が語る過去の出来事、夫の愛人とのやりとりが大変印象的でした。
妻のしたたかで賢い対応によって夫婦関係が保たれる、というのは、古今東西、事実としては変わりがないのではないか、というのが私の個人的見解です。しかし、この映画の展開では、若い女性が年齢を経た女性から男女関係に関して何かを学ぶ、という場面において、お手本として出てくる老妻の賢さが、私から見ると、ちょっと怖いような感じすらするしたたかさで、この辺りの描き方が、先に書いた、無条件に感情移入できないおもしろさの部分とも言えるでしょう。
いかにもゲイ風の若者が、最後には一転して男らしく告白したり、自信を持って愛人をしりぞけることが妻の正当な権利であり夫婦の基礎を強固にするものだったり、都市の若者の新しくおしゃれなライフスタイルや自由な恋愛を描きながら、その根底には確固とした道徳観が居座っているように感じました。
『蝸居』と通じるところがあります。
でもそんなややこしいことは抜きにして(物事を複雑に考えすぎるのは私の悪いくせなので)、映像はきれいだし、主役の二人のやり取りがコミカルだし、ストーリー展開もテンポがいいし、とても楽しめる映画でした。
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by koharu65
| 2012-05-24 21:51
| 本・小説・映画