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過去を振り返れば羞恥心に苛まれ、未来を想像すれば不安に襲われる。ただ道を踏み外さないように、足元だけを見つめて一歩一歩進むのが精一杯。だからせめて足跡を残そう。


by koharu65

命の重さ

 よく言われる「自殺しては絶対にいけない」「人は何があっても生を全うすべきだ」という概念が私にはどうしてもすんなりと飲み込めない。
 私はおそらく自殺はしない。でもそれは命が大切だからとか、自殺するのは卑怯だとか、人は精一杯生きるべきだ、とかそういう抽象的概念や理念によるものではなく、単に死ぬのが怖いからである。私固有のこの肉体に執着しているからである。
 少年や少女が自殺するたびに、学校の校長は子供たちの前でお題目のように「生命の尊さ」を唱える。でもどうして生命が尊いのか明確な説明はない。死はこの世の中に満ちている。爆弾で死ぬ人も、銃で死ぬ人も、飢えで死ぬ人も、地震や津波で死ぬ人も、交通事故で死ぬ人も、小さな子供が行列する蟻を一匹ずつ指で押しつぶしていくのを楽しむように、神の手はランダムに人の命を押しつぶしていく。いったい毎日どれくらいの命が、地上から消えていくのだろう。いくら人類の知恵が増そうとも、抗しきれないこの世の圧倒的な摂理を前に、人の命はとても軽い。「人の命」という抽象的な概念を思い浮かべるとき、それを重いと感じることは私にはどうしてもできない。私にとって重いのはただ「この私の命」であり、「私の命に連なる命たち」である。「私の命」を「人の命」という抽象的な概念に置き換えると、それはたちまち日々失われる無数の命の中に紛れ込み、行方が見失われてしまうだろう。
by koharu65 | 2007-05-22 00:00 | 雑感