過去を振り返れば羞恥心に苛まれ、未来を想像すれば不安に襲われる。ただ道を踏み外さないように、足元だけを見つめて一歩一歩進むのが精一杯。だからせめて足跡を残そう。


by koharu65

カテゴリ:中国・中国語( 46 )

忍野八海の土産物屋にて

 忍野八海でドライフルーツを売る露店の土産物屋があった。いろんな種類のドライフルーツがそれぞれ蓋のない浅くて四角い大きな箱にバラで盛られ、その中にまた細かく切った試食品を盛った小皿が置かれていた。
 試食しようと近寄ってみると、店の主人が、私のすぐ隣で試食していた年配の女性に対して、乱暴な言葉を投げかけたので、どきっとした。
「だめだよ。試食品はこっち!こっちは売り物なんだから。食べちゃだめでしょ。」
ちょうど私も試食品に手を伸ばそうとしていたところなので、一緒に怒られたような心持がした。
 女性は日本語のわからない外国からの観光客だった。
 彼女は店の主人の叱責を理解したのかどうか、試食したその品を指さし、これをくれ、と身振りで示した。香港人だろうか。言葉が広東語っぽかった。主人はあらかじめ分量を量って小分けしてあったビニール袋を取り上げた。すると女性は、だめだめ、こっちが欲しい、と箱にバラのまま山盛りにしてあるドライフルーツの方を指さす。
 主人は
「同じだよ。こっちもこっちも。」
と言うが、彼女は聞かない。
「まったくもう、めんどくせえなあ。この忙しいのに。」
主人はぶつぶつ言いながら、改めてライフルーツを袋に詰めて、量りにかけた。
 日本語のわかる私は、客に対してずいぶん乱暴な言葉使いをするな、と隣でどきどきしながら聞いていた。

 さて、帰ってからこの光景を夫に話し、
「びっくりした。お客さんに対してあんなふうに言うなんて。日本人って礼儀正しいと思っていたのに。」
と言うと、
「そっちが人間の本質ってことじゃない?」
と言う。
「うーん、本質ねぇ。」
「でも、そっちの方が楽だと思うな。無用な礼儀で汲々とするより。」

 そう言えば、と思い出した。北京でこれとそっくりな光景にあったことがある。
屋台で羊肉の串焼きを買おうとした時のこと。夫が、よく焼いてくれ、と注文をつけたにもかかわらず、あまり時間を置かずに渡されたので、夫は渡された串を勝手に再びコンロの上に置いた。大忙しで焼いていたお兄さんは、夫が置いた串がコンロを占領したので手順が狂い、邪魔だ、と怒ったのである。
(その時の記事はこちら:http://koharu65.exblog.jp/17058005/
 おやおや、あの時と同じじゃないか。

 ところで、ぶつぶつ言っていた日本の主人だが、くだんの外国の客に対して、
「これ、おまけね。本当は500グラムだけど、あと350グラム足しとくからね。」
と言いながら、わしづかみにしたドライフルーツをさらに足して袋にいれていた。
 その後、私が買った時も同じように、おまけだと言って封をしていない袋に一掴み足したので、おまけだと言いつつ、もともと850グラム分の値段だということなのだろう。言葉がどうであれ、相手が誰であれ、ここには、ただ、グラムいくらの公平な経済活動があるだけだ。

 ただし、日本の主人は、言葉の通じる日本人相手には決して、始めに述べたような乱暴な言葉を面と向かって投げかけるようなことはしないだろう。
 中国の串焼き屋のお兄さんは、言葉の通じる客に向かって遠慮なく本音を吐く。

 夫の言う通り差異のない本質があると同時に、一方で、日本の、身もふたもない本質をなるべく包み隠そうとする繊細さと、中国の、本質を露わにすることを恐れない逞しさと、気質の違いもまた感じる。


 
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by koharu65 | 2012-04-13 21:59 | 中国・中国語

意味するもの

 3月20日の日経新聞に、“中国の政変が意味するもの”というタイトルで、薄煕来・重慶市共産党委員会書記の解任劇を解説する囲み記事があった。

 まず、記事はこの解任劇を“1989年以来の最大の政変”と位置付けている。
 薄氏は現在9人いる中国の最高指導部入りを目指して活動してきたが、これによって挫折した。このこと自体は歓迎されている。なぜなら、彼は“統治方法のヒントを中国の最近の歴史の最悪の部分、特に文化大革命に求めた” 保守派(左派)だからである。“警告した温氏(温家宝首相)は正しかった”と評価する。しかしそれだけではない。
 

 薄氏解任で、不透明な選任プロセスでも不適切な候補者が排除されると確認されたとも主張できよう。だがそれはあまりに好意的過ぎる。後任が江沢民全国家主席の派閥から来たことは、江氏と結ぶ保守派と、胡氏や温氏に連なる自由主義的な共産党員との抗争が今も激しいことを示す。


 記事は、薄氏を最高指導部入りするには“不適切な候補者”だと断じ、胡氏や温氏に連なる自由主義的な共産党員が今後主導権を取ることが望ましいことを暗示している。しかし、保守派と自由主義的な一派との抗争は未だ激しく、予断を許さない。
 そして続いて “民主化推進や格差是正を訴える温氏の発言は魅力的だが、”実際に実行できるかどうかは疑わしい、と述べ、以下、民主化に向けた実行すべき具体的な措置の例を挙げている。人権活動家の解放や、村・群レベルでの民主化、汚職の取り締まり、消費者の保護など。しかしこれらの


ほとんどは実現の見込みが極めて低い。共産党はこうした措置が党崩壊につながりかねないと恐れる。だが中枢部の矛盾は、長期的には持続不可能で永遠には隠せない。これが先週の政変が真に意味することだ。


 政治的にでも社会的にでも、何か大きな事件が起こったとき、私は、それがいったいどういう意味を持つか、ということを知りたいと思う。ところが日本の新聞を読んでいても、なかなかそういうことがわからない。
 この記事はわかりやすく解説してあると感心していたら、記事の最後に、“(19日付社説)=英フィナンシャル・タイムズ特約”とあった。
 2日後の朝日新聞のこの事件に関する記事では、“「政争か」飛び交う憶測”と、今更の小見出しがつけられ、些末な経緯をぐだぐだと取り上げていた。

 むろん、英フィナンシャル・タイムズ紙が社説に書いた事件の意味は、中国に民主化を求めるイギリスという、ある特定の角度から見たものであって、中国から或いは日本から見た事件の意味は、イギリスと全く同じになると限らない。
 ある事柄が自分にとってどういう意味を持つかを明らかにすることは、自分の立場を明らかにすることである。事件が日本にとってどういう意味を持つのか、日本はいったいどういう立場に立って世界の出来事を分析し、解釈し、意味づけ、外に向けてメッセージを発信していくべきなのか、新聞や雑誌を読んでもそれがなかなか見えてこないことにもどかしさを感じることが多い。
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by koharu65 | 2012-03-25 16:01 | 中国・中国語

春节快乐!

 昨日は餃子を作りました。
 中身は2種類、ひとつは牛肉とダイコン(豚肉を少し)、もうひとつは海老とニラと卵。

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by koharu65 | 2012-01-24 22:51 | 中国・中国語

精神的ダイエット

 あさってからいよいよ北京です。先日、旅行と書きましたが、実は仕事関係の荷物(展示会に使う備品やサンプル品)を運ぶ役目を兼ねてのことなのでした。
 なので、荷物が重いです。非力な私にはちょっと辛い。

 で、仕事の荷物が多いので、重量制限により、自分の身の回り品を極力減らさなければならない。それが意外にも楽しかったりします。自分にとって最低限度必要な生活品は何か、考えながら少しずつ削っていくその過程が、贅肉をそぎ落としていくような喜びに繋がります。
 制限された条件の中で必要でないものを削っていく作業は、必要でないものに囲まれている普段の消費生活に喝を入れる感じです。思いがけず強いられた精神的ダイエットと言えるかもしれません。
 ちょっとおおげさかな?
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by koharu65 | 2011-10-13 21:22 | 中国・中国語
 先日、新聞か何かで、次のような内容の記事を読んだ。

 例え今の中国共産党が様々な問題を抱えていたとしても、何と言っても共産党が中国の経済的な発展をもたらしたという事実がある。もし経済が失速したら、政権はその存在意義を失ってしまうだろう。だから中国政府はとにかく経済的に安定することに全力を注がなければならない。

 どこの何の記事だったかすっかり忘れてしまって、原文を引用することができない。とにかくこんなふうな内容だった。
 それで、考えたのは、道徳や倫理・良識といったような秩序維持の感覚と、経済とのバランスについてということ。中国で次から次へと起こる人の命が失われる人為的な事故や事件の原因のひとつに、人々の間で、お金のためということが優先され、倫理や良識による秩序維持の感覚が失われている或いは形成されていない、ということがあるのではないかと思う。お金のためというのは私腹を肥やすということ。個人の利益を追求するということ。それによって、多くの命が失われ顧みられない事件がしばしば起きている。
 法的な束縛ではなく、その社会の構成員ひとりひとりの心の中に、社会の秩序を維持するために他人への配慮を行うということが当たり前だという感覚が形成されることが、経済の発展とともに必要なのではないかと思った。


 また別の話。
 先日、テレビで周恩来の特集をやっていた。家族や秘書など身近な人達が彼の人となりを語ることを中心として、人物像を描き出していくというものだった。
 ビデオに取ったのだけれども時間がなくてまだ少ししか見ていない。でもちょっと見ただけでも周恩来という人は本当にすごい人だ、とつくづく思った。文化大革命のとき、彼の尽力でどれだけの命が救われただろう。
 思想も権力も争わず、ひたすら多くの人の命のために、自分を生かさなければならないと信じた人だったのだと思った。
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by koharu65 | 2011-10-11 22:08 | 中国・中国語
 10月1日は中国の国慶節(建国記念日)。
 今年は10月1日(土)から7日(金)まで、一週間の休日となります。

 振替出勤による連休という制度は、日本にはない制度だ。7日の金曜日まで休んだ後、8日の土曜日と9日の日曜日には、振替で出勤する(つまり実質的には5日間の休みということ)。一週間まるまる休めるけど、その次の週は7日間連続して仕事しなきゃならない。うーん、それはそれで辛そうな気がする。

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(赤が休日、青は出勤)

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by koharu65 | 2011-09-18 16:35 | 中国・中国語

月餅が届きました

 先日、今年も月餅は届かず、という記事を書きましたが、昨日、EMSで月餅が届きました。
 9月8日に夫が北京から送った月餅は届かず、もう一度送るというのをもったいないからと止めたのですが、13日に2度目の発送をしたとのこと。

「え~!届かないに決まってるのに~。もったいないよ~。」
と言うと、
「たぶん今度は大丈夫だと思うよ。」
(いったい何の根拠があって?)
「中秋節が過ぎたから。」
(ああ、それはもしかしたら届くかも…。)

 なんと、予想通り、届きました。

 中国の月餅は、年々おいしくなっているように思います。或いは、夫が収集するおいしい月餅情報の精度が年々高まっているのか。

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 8個入っていましたが、中の餡の種類がそれぞれ異なっていて、何の餡かわかるように月餅の表に文字が型抜きされています。写真の月餅は「乳酪核桃」(チーズ胡桃)。
 ほんのりとチーズの香りがして、程よく砕かれた胡桃が多すぎも少なすぎもしないちょうどよい量で入っていました。
 他の餡もすべて甘すぎず、それぞれの素材の持ち味が生かされ、かつ全体が渾然一体とハーモニーを奏でる滑らかさと奥深さが感じられ、こんなおいしい月餅を食べたのは初めてでした。他の皆にも大好評。
 外箱から出して内箱だけにばらして送って来たので、メーカー名がわかりません。夫に、
「すごくおいしかった!高かった?」
と聞くと、
「超高級、ってほどじゃないけど。まあ、普通に高級。」
とのこと。メーカー名はわからないけど、長富宮(北京の日系ホテル)で買ったそうです。
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by koharu65 | 2011-09-16 22:30 | 中国・中国語

今年も月餅は届かず

 明日は十五夜。中秋の名月。今日は雲ひとつないお天気で、先程、外に出ると、夕暮れの濃紺の空に大きなお月様が掛かっていた。完璧なまん丸ではなく、左下がほんの少しだけ欠けていた。

 今年も月餅は届かない。数日前に夫が中国からEMSで郵送したという。同じ郵便局から同時に発送した別の小包は昨日届いているので、月餅はもう届かないのだろう。
 日本とアメリカは月餅を輸入禁止にしているそうだ。商売にする量じゃなし、個人の贈り物がどうしてだめなんだろう?
 普通は中国の郵便局で中身を確認されるので発送することすらできないのだけれど、夫はなんとかごまかして発送したらしい。もしかして運がよければ見逃されて届くかもと。
 夫が、
 「もう一度、送ってみるよ。」
と言うので、
 「え~!だめだめ。もったいないよ。」
と止めた。

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by koharu65 | 2011-09-11 19:42 | 中国・中国語

七月飛雪

 中国の高速鉄道事故で、事故後すぐに先頭車両が穴に埋められたことに対し、日本の報道は証拠隠滅だと騒ぎたてている。夫に話を聞くと、証拠隠滅なんてどうでもいい、それは二の次だ、問題は埋められた車両の中にまだ生きている人がいたんじゃないかってことだよ、それで皆、激しく怒ってる、のだそうだ。
 私は、えー、そんなことってあり得る?少なくともそのくらいは確かめているでしょう?と思ったのだが、実際、もう人はいないと確認され埋める指示が出された後、現場の一警察官が制止を振り切って更に探すと、取り残されていた少女を発見したのだという。
 それを伝えたCCTVのアナウンサーは涙ぐんでいたそうだ。

 「皆、事故後の政府の対応の仕方に怒っているの?それとも事故そのものに対して?」
 「事故そのものだね。」

 今日、上海に雪が降ったそうだ。中国に“六月飛雪”という言葉がある。六月の雪は、不当な扱いを受けた者の恨みが降らせるのだという。

 
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by koharu65 | 2011-07-27 00:18 | 中国・中国語

留学時代の出来事

 先日、ある人のブログを読んでいたら、その日が6月4日であったことに気がついた。それで昔のことを思い出した。
 私が北京に留学したのは1990年だったが、ある時、学校側がビデオを見せてくれた。なんだかビデオを見るってよ、という話が留学生仲間に口づてに伝わってきて、希望する生徒たちは課外の時間に、三々五々、娯楽室へと集まった。 ビデオは前の年に起きた事件を報道した中国のテレビ番組だった。日本人留学生たちは皆、先生たちがそのビデオを見せた意味をなんとなくわかっていた。中国ではこういうふうに報道されたんですよ、ということをただ伝えたかったのだと。私たちにビデオを見せてくれた目的を直接的に説明されたわけではないし、留学生同士で突っ込んで話し合ったわけでもないのに、なぜか、皆それを暗黙のうちに知っていた。ビデオを見せた先生たちと私たち日本人留学生は、それを通して、言葉にはできないある種の痛みを共有したのだ。
 ところが、これは後から聞いた話なのだが、欧米人のグループはビデオを見た後、大変怒っていたそうだ。何でこんなのを見せたんだ、私たちを洗脳するつもりなのかと。そう言われても先生たちには何も説明できない。それで、このビデオを見せることを決めた留学生管理部門のトップの先生が、「やっぱり日本人とは心が通じ合うところがあるけど、欧米人とはだめだな」とこぼしていた。
 もともとその先生には特別な経歴があって日本語がぺらぺらだったので、日本人留学生たちとも普段から親しくしていて、そういうお互いの考えや性質をよく知っているがゆえの暗黙の了解みたいなのがあったのは確かだ。それにしても、そもそも西洋人は伝えられる中身そのものに注目するのに対して、東洋人は中身よりもその背景や関係性全体を通して物事を判断するという両者の違いがあるのだろうかと思った。

 そんな話を思い出した。
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by koharu65 | 2011-06-14 22:11 | 中国・中国語